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 まず、身近なところで歯ブラシについてお話ししましょう。来院される患者さんがよく言われる事に、“歯ブラシはちゃんとしてるのに、どうして虫歯ができてしまうのか”というお言葉があります。ちゃんと歯ブラシをしているつもりでも、みがけているかどうか、これが問題なのですね。歯ブラシをちゃんとしているつもりなのに、虫歯ができたり“歯そう膿漏ですね”と言われる方は、歯ブラシするときにポイントを押さえたみがき方ができていないか、あるいはブラシをかける時間が少ないことが、そう言われてしまう原因と考えられます。
早い話、どこかにみがき残しがあるということなのです。みがき残しがあるかどうか、簡単にチェックするには「染め出し」といわれる方法があります。最近では小学校でも実施されているところがあり、すでにご存じのかたもおいででしょう。これはみがき残した歯垢(プラークとも言います。食べかすではありません。バイキンの固まりのことです)を染めることにより、どこが汚れているかを視覚的に明らかにするものです。
もっと簡単にチェックするには、舌で歯を触ってみることです。敏感な舌は、歯に付着したプラークを凹凸としてとらえるはずです。デコボコしていたり、ザラザラしているのは歯垢が存在する証拠です。だが、それを知るためには、歯垢のない歯の表面本来のツルツルした状態を把握していないと、チェックにならないかも知れませんね。

そして、歯磨きは一日の中では夜が最も大事です。夜お酒を飲んで、面倒臭いからといってそのままおやすみになってしまう方はいませんか?
お酒のアルコールで消毒したから大丈夫、というのは全くあてになりません。
なぜなら、仮にお酒のアルコールでばい菌が死んだとしても、それはプラークの極表層の部分にしか過ぎないからです。プラークの中にいるばい菌はしっかり生きていて、着々と外に酸性毒素を出して虫歯を作っていくのです。

 歯ブラシ以外にも“糸ようじ”(デンタルフロスとも言います)や“歯間ブラシ”(※後述)といった補助的清掃器具も、歯ブラシでは取りきれない汚れを取るのに、大変効果があります。しかし、その肝心のみがき方や器具の使い方については、かかりつけの歯医者さんに聞いて下さい。不親切と思われるかもしれませんが、文字からでは歯ブラシの仕方や、器具の使用法のニュアンスがなかなか伝えにくく、間違った解釈をされてしまうと困るからです。誤った使い方をすると歯茎を傷つけたり、長い間には歯が減ってしまうこともありえます。実際に指導してもらうことが非常に重要と思います。自己流にならない為にも、また取れにくい汚れが取れているかどうかを確認する点においても、第三者にチェックしてもらうことが大事なのです。またこの時、現在お使いのブラシを持参するとよいでしょう。多種多様なブラシの適否についても知ることができるはずです。

 ここで、お子さんの歯ブラシについても一言。
私は10才くらいまでは、お母さんやお父さんの仕上げみがきが必要と考えます。しかし10才を超えたからといって、もちろんいきなり仕上げ磨きがいらなくなる訳ではありません。やはり時々チェックしてあげると良いと思います。そして、お子さんだけに歯ブラシを任せてしまう前にまず気をつける事は、移行する前に鏡などを一緒に見ながら手本を見せる等の工夫をしてあげる事でしょう。
小学生になれば“もう一人でできるのではないか”と仕上げみがきをしてあげなくなってしまう場合が多いのではないでしょうか? 大人でさえ難しい歯ブラシを、低学年のお子さんにすべて任せてしまうのは、ちょっと不安です。裏を返せば、幼いお子さんが虫歯を作ってしまうのは、親の責任である、と言っても決して過言ではないのです。特に就学時期前後は、永久歯のはえだす大事な時期です。この時期の油断で、永久歯に虫歯をつくってしまうお子さんを、私は大勢診てきました。歯ブラシをちいさいころからの習慣にしてしまえば、そのお子さんが大きくなったときに、きっとご両親に感謝することでしょう。
私事で恐縮ですが、8才になる私の長男は、自ら進んで“仕上げみがきして〜”とやって来ます。彼にとって、歯ブラシは欠かすことのできない習慣になっているのです。

 お子さんに歯ブラシの大事さを説明していると、「ホラ○○チャン、解った?」なんて言っている付き添いのお母さんがいらっしゃいますが、実は私としましては、本当にご理解頂きたいのはお母さんのほうなのですね。「この子は歯みがきが嫌いで...」と言い訳されているお母さん、よくお聞き下さい。もともと歯ブラシ好きな子なんて見たことがありません。徐々に訓練して、みがかせてくれるように仕向けなければいけないのです。いやがっていても、そのことが原因でお母さんを嫌いになってしまうお子さんがいないのも事実なのです。(説教じみてしまいましてスイマセン。私がそれだけお子さんの歯みがきに真剣に取り組んでいるということでご理解の程を...)
 ここで、8ヶ月になる赤ちゃん(まだ歯は一本も生えていません)に、歯ブラシをおもちゃ代わりに持たせている所をご覧ください(Fig.1)。彼女にとっては、歯ブラシも立派なおもちゃです。この経験は将来歯ブラシする際、必ず役にたちます(歯ブラシをいやがらないという意味において...)。

  
Fig.1:何にでも興味津々の彼女にとって、歯ブラシも格好のおもちゃになります!
ただし事故防止のため、親御さんは必ずそばで監視してあげて下さい


 お子さんの歯をみがいてあげることで、どこが汚れやすいか、どうすれば汚れが取れるのか、を知るチャンスにすることができる、というメリットもあります。つまり、自分の歯みがきに、そのポイントを生かせるわけですね。(もちろん、親子のコミニュケーションやスキンシップが得られる、という点も見逃せないメリットです。)

※“歯間ブラシ”とは読んで字のごとし、歯の間をみがくためのブラシです。インターデンタルブラシとも言います。ただし、これはある程度歯の間にスキがないと使用できないため、万人向けではありません。冠が連結してあるブリッジなどが入っている方は、糸ようじが入りにくいと思いますので、これを使用して頂くとブリッジの下にたまった汚れを取るのに効果的です。

 デンタルフロスについて


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